気管支喘息(治療)

喘息の診断・検査について

喘息の診断・検査に関しては、気管支喘息(診断・検査)をご覧ください。

喘息治療の基本は吸入ステロイド

喘息はアレルギー性炎症により気管支が過敏となり、気管支がせまくなり、咳やたんが出て苦しくなる病気です。普段は症状がなくても、症状が突然出ることがあり、これを喘息の増悪(発作)といいます。患者さんの多くは増悪が起こり、症状を治すために医療機関を受診されます。それでは喘息の症状をとるために、気管支がせまくなったら気管支を広げる薬(気管支拡張薬)、咳や痰がでるならそれらを抑える薬(せき止めや去痰薬)を使えばよいのでしょうか。実は喘息治療の基本はアレルギーの炎症を抑える吸入ステロイド治療です。喘息はアレルギー性炎症により起こるため、原因そのものであるアレルギー性炎症をとるために吸入ステロイドによる治療を行います。


そして、吸入ステロイドに加え、気管支がせまいときは気管支拡張薬を、さらに咳や痰がひどく効果が不十分な場合は抗コリン薬を併用します。増悪(発作)が起こった時にはすぐに気管支を広げることが出来る吸入薬(発作止め)や症状がひどいときにはステロイドの内服治療も行われます。

苦しい時だけでなく、症状がなくなっても治療を続けるべき?

苦しい時だけでなく、症状がなくても治療を続けるべきでしょうか?喘息患者さんでは症状がなくても水面下で「炎症」や「伸び縮み」が起こっています。「炎症」「伸び縮み」が繰り返されると気管支が固くなり太くなる、病的な老化である「気道リモデリング」が起こります。症状がなくても吸入薬を続けることは、気管支の炎症や伸び縮みを防ぎ、気道リモデリングの予防につながります。将来の重症化のリスクを防ぐために、喘息治療を継続するようにしましょう。

気道リモデリングとは

喘息患者さんでは、咳や痰、呼吸苦や喘鳴などの症状がなくても、水面下ではアレルギー性の炎症や、気管支の伸び縮みが起こっていると考えられており、これを表したものが「喘息氷山」です。それでは症状がなくなっても治療を続け、アレルギー性の炎症や伸び縮みを防ぐことに意味はあるのでしょうか?

実は、喘息患者さんでは健常人と比べ、年齢とともに肺機能が低下する速度が早いことが知られています。この病的な気道の老化を「気道リモデリング」といいます。

本邦の研究では、気道のアレルギー性炎症を表すFeNO(呼気一酸化窒素)が高値(40ppb以上)の患者では、低値(40ppb以下)の患者と比較し、気管支のせまさを表す1秒量の経年的な低下が大きいことが報告されています。このことは気道のアレルギー炎症が気道リモデリングに密接に関わっていることを示唆しています。

それでは気管支の壁が太くなり、硬くなっている状態(気道リモデリング)とは、一体どのような状態なのでしょうか。実際の顕微鏡の写真で見てみましょう。

左側が正常な方、右側が喘息で気道リモデリングを来している状態です。中心の空洞になっている部分が息の通り道です。正常な方と比べて気道リモデリングを来している喘息患者さんでは、気管支の壁が分厚く、気管支の筋肉が太く、痰を分泌させる細胞が多いことが分かります。そのため、気道リモデリングを来している喘息患者さんでは、気管支径がとてもせまくなっており、これ以上広がらないことを意味しています。

喘息治療の治療目標と評価

喘息の治療目標は、気道の炎症を抑え、気管支の伸び縮み(気管支狭窄)を防ぎ、喘息症状をコントロールすること、長期的には気管支の病的な老化(気道リモデリング)を予防することです。これらの治療目標を達成するには、問診票や検査に基づく客観的かつ多面的な評価を行うことが大切です。

喘息の管理目標(引用:喘息予防・管理ガイドライン2021

症状のコントロール
(増悪や喘息症状がない状態を保つ)
  1. 気道炎症を制御する
    (可能な限りFeNO測定や喀痰好酸球検査で気道炎症を評価する。)
  2. 正常な呼吸機能を保つ
    (PEFが予測値の80%以上かつ日内変動が10%未満)。
将来のリスク回避
  1. 喘息死を回避する。
  2. 急性増悪を予防する。
  3. 呼吸機能の経年低下を抑制する。
  4. 治療薬の副作用発現を回避する。
  5. 健康寿命と生命予後を良好に保つ。

ぜんそくコントロールテスト(ACT)

気管支喘息の定期治療が開始された後、治療強度が適切か評価を行う必要があります。医師による主観的な評価により喘息コントロールが良好であると判断された割合は約80%であったのに対し、患者評価型の質問票により、喘息のコントロールが良好であると判断された割合は約50%と少なかったことが報告されています。

当院では、喘息の病状を正しく評価するためには患者評価質問票である喘息コントロールテスト(ACT)が欠かせないと考え、診察前には必ず記載をお願いしております。

ぜんそくコントロールテスト(ACT)とは5項目の質問の合計点により、現在の喘息のコントロールを評価する質問票です。 5点×5項目の計25点満点で評価を行います。

Q1 この4週間に、喘息のせいで職場や家庭で思うように仕事がはかどらなかったことは時間的にどの程度ありましたか? 
1点 いつも
2点 かなり
3点 いくぶん
4点 少し
5点 全くない
Q2 この4週間に、どのくらい息切れがしましたか?
1点 1日に2回以上
2点 1日に1回
3点 1週間に3~6回
4点 1週間に1,2回
5点 全くない
Q3 この4週間に、喘息の症状のせいで夜中に目覚めたり、いつもより朝早く目が覚めてしまうことがどのくらいありましたか?
1点 1週間に4回以上
2点 1週間に2,3回
3点 1週間に1回
4点 1,2回
5点 全くない
Q4 この4週間に、発作止めの吸入薬(サルブタモールなど)をどのくらい使いましたか?
1点 1日に3回以上
2点 1日に1,2回
3点 1週間に数回
4点 1週間に1回以下
5点 全くない
Q5 この4週間に、自分自身の喘息をどの程度コントロールできたと思いますか?
1点 全くできなかった
2点 あまりできなかった
3点 まあまあできた
4点 十分できた
5点 完全にできた
25点(満点) 好調です。このまま続けましょう!
あなたの喘息は完全な状態(トータルコントロール)です。全く症状がなく、喘息による日常生活への支障は全くありません。この調子で治療を続けましょう。もしこの状態に変化があるようならば、担当医師にご相談ください。
20点から24点 順調です。あと一息
あなたの喘息は良好な状態(ウェルコントロール)ですが、完全な状態(トータルコントロール)ではありません。担当医師のアドバイスにより治療を継続し、トータルコントロールを目指しましょう。
20点未満 まだまだです。もっとよくなります。
あなたの喘息は、コントロールされていない状態です。
あなたの喘息状態を改善するために、担当医師と治療方法をよく相談しましょう。

引用:https://videos.gskstatic.com/pharma/Health/Japan/asthma/support-tools/act-adult/index2012.html

咳と痰(たん)についての問診

コントロール不十分と判断された喘息患者さんの原因を調べた本邦の疫学研究で、最も多い症状は日中・夜間を問わない「咳と痰(たん)」であったと報告されています。実は先ほどご紹介した喘息コントロールテストには、「咳と痰(たん)」についての項目は含まれていません。そのため、当院では診察の際に「咳や痰」の有無についての問診を必ず行っています。

呼気NO(FeNO)検査

 


呼気NO(FeNO)は気道のアレルギー炎症を表しています。おおよその目安ですが、健常人では15-25ppb程度が基準値で、37ppbが健常値上限とされています。本邦の報告ではFeNOが40ppb以上(高値群)と40ppb以下(低値群)の2群に分け、3年間の呼吸機能(1秒量)を追跡したところ、40ppb以上の高値群では経年的な呼吸機能の低下がより大きかったとしています。気道炎症を制御することは、気道の老化(気道リモデリング)を予防することにつながると考えられることから、当院ではFeNOの値を参考に、吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)など抗炎症治療薬の調整を行っています。

呼気一酸化窒素(FeNO)は、気道に「好酸球性炎症」があると上昇します。好酸球炎症を起こす疾患として「喘息・咳喘息」があります。FeNOを測定することにより、気道炎症のレベルに基づく「喘息・咳喘息の診断」や「ステロイド治療の効果予測」に有用であることが報告されています。また既に喘息と診断されている場合も「喘息治療コントロールの評価」に有用と考えられます。

呼吸機能検査、気道抵抗性試験


呼吸機能検査や気道抵抗性試験は気管支のせまさを測定することが出来ます。気管支のせまさと、息切れや呼吸苦などの自覚症状(例えばぜんそくコントロールテストの結果)は必ずしも一致しないことがあります。1年に1回程度は定期的な評価を行うか、気管支拡張薬の増減など、治療変更の際に測定しておくと良いでしょう。

ピークフローメーター


ピークフローメーターは、患者さんがご自宅で肺機能を簡便に測定出来る医療機器です。息をどれだけ早く吐き出せるかを見る検査で、「瞬間最大風速」を見ています。ピークフローメーターの最大のメリットは、気管支の経時的な変化を見ることができることです。起床時と午後の気管支のせまさの差を「日内変動」といい、喘息の病態そのものである気道過敏性を表していると考えられています。(気道過敏性は一部の専門施設を除き検査することが困難です。)当院ではピークフローメーターによる日内変動の評価は、喘息治療の指標として利用価値が高いと考え、特に重症例を中心に行っています。

併存症の評価

気管支喘息に併存する重要な疾患について評価し、必要に応じて治療を行います。

喘息の主な併存症

日常生活での注意点

喘息の患者さんが治療以外に気をつけるべきことをまとめました。

ハウスダスト(ダニ)対策

ダニは高温多湿環境下で繁殖し、特に寝具周りのお手入れが重要です。掃除機をしっかりかけ、こまめな換気を心がけましょう。

感染予防対策

喘息増悪のきっかけの多くは感冒(ウイルス感染)と言われています。感染予防を行い、風邪を引かないようにしましょう。

花粉症対策

スギ花粉をはじめ、季節の花粉はアレルギー性鼻炎や喘息悪化の原因となります。花粉症対策を行い、悪化する前に早めの治療を行いましょう。

吸入薬を忘れずに使いましょう

吸入薬を続けることで喘息増悪予防につながります。吸入薬は日常生活の導線上に置き、アラームやリマインダーなどスマートフォンを上手に活用して吸入薬を忘れないようにしましょう。また吸入薬がなくなってしまわないように、外来受診予定の計画を立てるようにしましょう。

喘息増悪(発作)治療

喘息増悪は何らかの誘因により、発作的に気管支が狭くなることにより、呼吸困難を来し、ゼイゼイ、ヒューヒューする状態です。喘息増悪で起こっている事と治療をまとめます。

喘息増悪で起こっている事と治療薬

気道平滑筋(きどうへいかつきん)の収縮

炎症で気管支の周囲の筋肉が縮んでしまい気道がせまくなる

→気道平滑筋を弛緩(しかん)させ、気管支を広げる

  • 短時間作用型気管支拡張薬

気道粘膜のむくみ(浮腫:ふしゅ)

気管支の粘膜が炎症ではれてしまい気道がせまくなる

→炎症を抑えて、むくみとる

  • ステロイド(即効性を期待する時は経口もしくは点滴薬を使用)

気道分泌物(痰)の貯留

気道粘膜が炎症を起こし粘調な痰を産生し、気管支壁にくっついてしまう

→分泌物の排出を促す

  • 去痰薬
  • 短時間作用型気管支拡張薬

→分泌物を減らす

  • 短時間作用型抗コリン薬(SAMA)

→細菌感染が併発している場合

  • 抗生剤
短時間作用型気管支拡張薬

即効性あり、20-30分程度効果が期待。呼吸困難時に頓用で使用します。

「SABA」と「SAMA」では薬効が異なるため、両方併用することが可能です。

  メプチンエアー
短時間作用型β2刺激薬
(SABA)
1回あたり1~2回吸入、気管支拡張効果:20~30分間、1日最大8吸入まで。
副作用)動悸、手の震え
  サルタノールインヘラー
短時間作用型β2刺激薬
(SABA)
1回あたり1~2回吸入、気管支拡張効果:20~30分間、1日最大8吸入まで。
副作用)動悸、手の震え
  アトロベントエアゾル
短時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬(SAMA)
1回あたり1~2回吸入、気管支拡張効果:20~30分間、1日最大8吸入まで。
副作用)口喝、眼圧上昇(閉塞隅角緑内障)
去痰薬

痰の粘調度を下げたり、痰の切れを良くすることで痰を出しやすくする薬です。カルボシステインとアンブロキソールは併用することもできます。

商品名 ムコダイン ムコソルバン ムコソルバンL
一般名 カルボシステイン アンブロキソール アンブロキソールL
内服方法 1日3回 1日3回 1日1回
効果 痰の粘調度を下げる 痰の切れを良くする
経口ステロイド

経口ステロイドは呼吸苦があり横になれない、呼吸状態が悪い時など、重度の喘息増悪に限り使用されます。吸入に比べ短期間で気道のアレルギーを改善させ、気道の浮腫(むくみ)を取ることにより、喘息増悪を改善させます。しかし、長期間にわたり内服すると、骨密度の低下や、血糖値の上昇、感染症や血栓症のリスクとなるため、投与する際は「短期間(5~7日間)」の投与が原則です。吸入薬などの定期薬をしっかり続けているにも関わらず、経口ステロイド投与を年間2回以上必要とする場合は重症喘息と判断し、ステロイドの投与を回避するために生物製剤(注射)の薬を検討することがあります。

商品名 プレドニン
一般名 プレドニゾロン
内服方法 1日1回(朝)
体重あたり0.5㎎/㎏
効果 喘息憎悪を改善させる

喘息定期治療薬

喘息定期治療薬の目的は、➀気道の炎症を抑えること、②気管支を広げること、③咳や痰を減らすこと、の3つに分類されます。

喘息定期治療薬の目的

気道炎症を抑えること

  • 吸入ステロイド(ICS)
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
  • テオフィリン徐放薬(SRT)

気管支を広げること

  • 長時間作用型β2刺激薬(LABA)
  • 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)
  • テオフィリン徐放薬(SRT)

咳や痰を減らすこと

  • 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)

そして、喘息患者さんの病状に合わせて治療強度を階段状に調節します。これを喘息の治療ステップといいます。吸入ステロイド薬(ICS)を基本とし、気管支拡張薬であるLABAやLAMAを必要に応じて併用します。近年は吸入ステロイド(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の2剤配合剤(ICS/LABA)や、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)を含めた3剤配合剤(ICS/LABA/LAMA)も選択出来るようになり、喘息の吸入治療の幅が広がっています。また、炎症を抑えアレルギー性鼻炎にも効果があるロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)や、喘息がコントロール出来ない難治例などに対し、テオフィリン徐放薬(SRT)も適宜併用されます。

吸入薬の種類

吸入薬には大きく分けて2つの剤型があります。

ドライパウダー製剤(DPI)・・・「粉タイプ」

ドライパウダー製剤には薬物成分が粉の状態で充填されており、ご自分の力で肺に吸い込むことにより吸入を行います。吸い込む力である「吸気流速」が遅い方ですと十分な効果が得られない可能性があります。操作自体は簡単なものが多く、カウンターがついており残数確認が容易です。製剤が粉ですので、吸った感じは強く感じられると思います。

加圧定量噴霧式製剤(PMDI) ・・・「ガスタイプ」

ガスの圧力で霧状の薬液を吸入します。吸気流速が遅い方でも吸入することができます。一方で、薬の噴射と薬を吸い込むタイミングを同調させる必要があります。カウンターがついていないものが多いですが、最近の製剤では簡易的なものがついています。霧状の薬液ですので吸った感じはあまり強くありません。一部の吸入薬ではエタノールがごくわずかに含まれており、アルコール過敏の方はご注意頂きたいと思います。

ドライパウダー(DPI)と噴霧式(pMDI)どちらがよい?」

どちらを使ってもきちんと使用出来ていれば効果は同等と考えられます。選ぶ際のポイントをいくつかまとめてみました。

  • 「吸入する力が弱いお子様や高齢者」 pMDI製剤
  • 「のどの違和感や声枯れが気になる方」pMDI製剤
  • 「多忙なので1日1回がよい方」DPI製剤
  • 「アルコール過敏の方」 DPI製剤
  • 「アルコール過敏かつ声枯れが気になる方」pMDI(フルタイド/アドエア)

ICS(吸入ステロイド)

  • アレルギー性炎症を抑える

当院で良く使用する吸入ステロイドをまとめました。
粉かガス、副作用やアルコール過敏の有無から吸入薬を選択すると良いでしょう。

1ヶ月薬価:400~700円(3割負担、調剤代含まない)

  アニュイティエリプタ
100, 200μg
ドライパウダー
1日1回・1吸入
ふたを開けるだけで吸入可能で、1日1回吸入で良い。吸った感じ(粉感)が少し強い。
  パルミコートタービュヘイラー
100, 200μg
ドライパウダー

1日2回・1回1~4吸入

妊婦さんに対する安全性が高いとされる。吸った感じ(粉感)はほとんど感じない。
  オルベスコインヘラー
100, 200μg
pMDI
1日1~2回・1回1~2吸入
ガスタイプの吸入薬で、声枯れ(嗄声)やのどの痛み、口内炎などの局所の副作用が最も少ない。
  フルタイドエアゾール
50, 100μg
pMDI

1日2回・1回1~2吸入

ガスタイプで唯一アルコールを含まない。声枯れなどの副作用ありアルコール過敏の方に。

LAMA(長時間作用型抗コリン薬)

  • 気管支を長時間広げ、咳・痰を減らす

喘息に適応があるのはスピリーバレスピマット(ソフトミスト製剤)のみです。
吸入ステロイド(ICS)との組み合わせで治療を行うことがあります。

1か月薬価:1200円(3割負担・調剤代含まない)

  スピリーバレスピマット
2.5 μg
ソフトミスト
1日1回
1回2吸入
霧状のミストを吸入します。吸う力を必要とせず、pMDI(ガスボンベ)に近い吸入薬です。

ICS/LABA配合剤

  • ICS(吸入ステロイド):アレルギー性炎症を抑える
  • LABA(長時間作用型β2刺激薬):気管支を長時間広げる

粉(ドライパウダー)かガスタイプ、吸入回数などから薬剤を選択します。

1か月薬価:1400~1700円(3割負担・調剤代含まない)

  レルベアエリプタ
100, 200μg
ドライパウダー

1日1回・1回1吸入

ふたを開けるだけで吸入可能。1日1回と簡潔さが良い。吸った感じ(粉感)が少し強い。
  シムビコートタービュヘイラー
100, 200μg
ドライパウダー

1日2回・1回1~4吸入

含まれるステロイドは妊婦に対する安全性高。吸った感じはほとんど感じない。発作薬と維持薬を兼ねることが出来る。
  アテキュラブリーズヘラー
低・中・高
ドライパウダー

1日1回・1回1吸入

カプセル充填式で吸えたかどうかの確認が出来る。1日1回と簡潔さが良い。吸入支援アプリ(プロペラ)が利用可能。
  フルティフォームエアゾール
50, 125μg
pMDI

1日2回・1回1~4吸入

ガスタイプの吸入薬で、吸う力が弱い方や、局所の副作用(声枯れ、のどの痛み)がある方に良い適応。

ICS/LABA/LAMA配合剤

  • ICS(吸入ステロイド):アレルギー性炎症を抑える
  • LABA(長時間作用型β2刺激薬):気管支を長時間広げる
  • LAMA(長時間作用型抗コリン薬):気管支を長時間広げ、咳・痰を減らす

3つの成分が1剤に入った吸入薬です。喘息適応は粉タイプのみで、2種類あります。

1か月薬価:2600円~3300円(3割負担・調剤代含まない)

  テリルジーエリプタ
100, 200μg
ドライパウダー

1日1回・1回1吸入

ふたを開けるだけで吸入可能。1日1回と簡潔さが良い。吸った感じ(粉感)が少し強い。3剤配合剤はやや苦味あり。
  エナジアブリーズヘラー
中・高
ドライパウダー

1日1回・1回1吸入

カプセル充填式で吸えたかどうかの確認が出来る。1日1回と簡潔さが良い。吸入支援アプリ(プロペラ)が利用可能。

吸入薬の使い方

動画で使い方を確認しましょう

吸入薬は正しい使い方で吸うことにより、はじめて効果を発揮できます。自宅で実薬を使う前に吸入薬の使い方を動画や吸入トレーナーを使用して確認しておきましょう。

http://www.kyunyu.com/Public/menu

吸入後はうがいを行いましょう

吸入ステロイドは口やのどに付着すると口内炎や声がれの原因となります。吸入薬を使用したら必ずうがいを行うか、外出先などでうがいが出来ない場合は吸入後に水を飲みましょう。

「ホー吸入」:舌の位置を意識した吸入方法

吸入を行う際、吸入薬が舌に当たると気管支に届かなくなってしまいます。「ホー吸入」は「ホー」と発声し、舌の位置を下げるように吸入することで、舌に当たらずしっかり吸入することが出来る方法です。

吸入補助具(スペーサー)

スペーサーとは、その名の通りスペースを作ることで、ボンベタイプの吸入薬(pMDI)を行うための補助器具です。スペーサーを利用することで得られるメリットをご紹介します。
スペーサーとは、その名の通りスペースを作ることで、ボンベタイプの吸入薬(pMDI)を行うための補助器具です。スペーサーを利用することで得られるメリットをご紹介します。

「押す」「吸う」タイミングが多少ずれても大丈夫

ボンベタイプの吸入を行なう上で難しいのは、「押すタイミング(噴霧)」と「吸入のタイミング」を合わせることです。このスペーサーを使用することにより、タイミングのズレを解消し確実に吸うことが出来ます。

副作用を減らし、吸入効率を向上させる

pMDI製剤は口腔内に吸入薬を噴射させる際、口の壁やのどの奥に当たった薬剤は気管支に届かず付着し、副作用の原因となることがあります。スペーサーを利用することで口やのどに直接当たるのを防ぎ、吸入効率を向上させることが出来ます。

経鼻(吸入)呼出療法

吸入薬を鼻から呼出する方法です。ボンベタイプの吸入薬(pMDI)を用いてスペーサーで経鼻(吸入)呼出を行うと、鼻炎などの改善が期待出来ます。また、マスクタイプのスペーサーの場合は経鼻吸入を行うことも可能です。

保険適応について

6歳未満または65歳以上の喘息患者でpMDIタイプの吸入ステロイド薬を使用する場合、初回のみ保険適応でスペーサーをお出しすることが出来ます。(喘息治療管理料2)

(ご自分で購入する場合は、オンラインで1000円~3000円程度)

ダニアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)


喘息管理予防ガイドライン2021より、喘息に対する標準治療としてダニアレルゲン免疫療法が記載されています。特にダニアレルギー性鼻炎合併の喘息患者さんに良い適応とされています。治療期間は3~5年間と長期に渡りますが、喘息を軽症化させ、新たなアレルギー獲得を抑制する効果があります。治療を行うにはアレルゲン検査による確認が必要です。

ダニアレルゲン舌下免疫療法による効果

  • ダニによるアレルギー性鼻炎の改善
  • ダニアレルゲン陽性喘息の軽症化(吸入ステロイドの減量、喘息増悪頻度の抑制効果)
  • 長期に渡り新たなアレルゲン獲得を抑制する

難治性喘息と生物学的製剤

生物学的製剤投与の目的

  • 難治性喘息に対し、増悪を予防し、全身ステロイド投与を回避すること
  • 既存治療でコントロールできない難治性喘息のコントロールを改善させること

高用量の吸入ステロイドや気管支拡張薬を含む各種治療(本邦の治療ステップ4相当)を行っているにも関わらず、喘息コントロールが不良で、時に全身(経口)ステロイドの投与を必要とする状態を難治性喘息と言います。難治性喘息は喘息全体のうちおおよそ1割程度に存在すると言われています。全身(経口)ステロイド投与は、骨粗しょう症や高血糖、感染症などのリスクにかかわる重大な問題です。近年、既存の治療薬でもコントロール不良な難治性喘息に対し「生物学的製剤」の投与が行われ、増悪予防し、コントロールを改善させ、全身(経口)ステロイド投与を減量・回避できるようになってきています。

 

生物学的製剤を投与する前に確認すべきこと

  • 吸入手技に問題ないか確認(吸入薬変更で病状が改善することがあります)
  • 喘息以外の疾患の除外(COPD、心不全、肺癌、結核など)
  • 喘息を悪化させる併存症(好酸球性副鼻腔炎、アスピリン不耐症)の確認
  • アレルギー検査を行い2型炎症(FeNO, 好酸球、IgE)の評価

併存症の中でも、「好酸球性副鼻腔炎(ECRS)」や「アスピリン不耐症」を合併した場合は喘息が難治となりやすく注意が必要です。

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)

喘息に併存する疾患のうち、難治性喘息のリスクとなる疾患が好酸球性副鼻腔炎(ECRS)です。ECRSは鼻茸を伴う副鼻腔炎であることが多く、嗅覚が鈍くなり、消失するケースも多いようです。またアスピリン不耐症を良く合併し、喘息を合併した場合は難治例となることが多いと考えられています。

喘息にECRSを合併すると、吸入ステロイドによる治療を行っていてもFeNOが高値(>50ppb超)となることが多いとする報告もあり、本症を疑うきっかけとなります。診断には副鼻腔CTと血中好酸球数が参考になります。

アスピリン喘息(アスピリン不耐症)

アスピリン喘息(不耐症)と診断された場合は、市販の風邪薬や湿布薬を使用すると悪化する恐れがありますので使用を控え、必要な場合は主治医と相談しましょう。

アスピリン喘息(不耐症)

  • アスピリン、バファリン、ロキソニンなどの解熱鎮痛薬(NSAIDs)に対する不耐症
  • 20~40歳代で発症、女性、非アトピー性であることが多い。
  • 今まで内服出来ていたから大丈夫とは限らない(後天的に起こる)
  • ミントの歯磨き粉やカレーのスパイスが苦手なことがある。
  • 鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎(ECRS)を高率に合併する。
  • ECRSによる嗅覚障害が先行しているケースが多い。
  • 好酸球性中耳炎や好酸球性腸炎など肺外合併症も多い。
  • NSAIDs内服後1時間以内に鼻閉・喘息発作を来す。

当院で処方を行っている生物学的製剤

当院では従来の喘息治療ではコントロール出来ない難治性喘息(Step4相当)を対象とし、生物学的製剤の導入・治療を行っています。取扱薬剤は自己注射可能な下記3剤です。投与にあたっては薬剤毎の適応症及び効果・効能に従って行います。また高額な薬剤となりますので、事前に想定される医療費(自己負担金額)について確認を行った上でご説明致します。初回投与については院内で行い30分以上観察を行います。自己注射については十分な指導のもと、診察室で確認させていただきます。注射手技が問題なければご自宅で投与いただくことが可能です。

  デュピクセント
デュピルマブ
抗IL-4Rα抗体

2週毎 皮下注

<適応症>

気管支喘息
好酸球性副鼻腔炎
アトピー性皮膚炎

<バイオマーカー>

呼気NO(FeNO)高値

  ヌーカラ
メポリズマブ
抗IL-5抗体

4週間毎 皮下注

<適応症>

気管支喘息
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

<バイオマーカー>

末梢血好酸球高値

  ゾレア
オマリズマブ
抗IgE抗体

2~4週間毎 皮下注

<適応症>

気管支喘息
特発性じんましん
季節性アレルギー性鼻炎

<バイオマーカー>

吸入抗原特異的IgE陽性

生物学的製剤導入の流れ

  1. 病状評価の後、医師により生物学的製剤が必要と判断
  2. 医療費助成制度(高額療養費制度、付加給付制度、喘息公費制度、指定難病制度)及び、想定される医療費(自己負担分)について確認を行い、ご説明いたします。
  3. 自己注射のための指導を受けて頂き、事前に練習を行います。
  4. 初回投与は診察室で行い30分観察します。(注射手技を確認して頂きます。)
  5. 2回目投与は診察室で自己注射をご自分で行って頂きます。
  6. 3回目以降の投与については、手技が問題なければご自宅で注射して頂きます。

*既に自己注射を行っている方については手技の確認のみ行います。

ご予約はこちらContact

ご予約はこちらご予約はこちら

お電話

お問い合わせ
専用ダイヤル
03-3877-1159

24時間
WEB予約

検査・診察のご予約は
こちらから24時間
お取りいただけます。

24時間
WEB問診

事前問診にご協力
いただくことで院内での
待ち時間削減やスムーズな診療につながります。

  • 初診・再診 WEB予約初診・再診 WEB予約
  • お問い合わせ専用ダイヤル 03-3877-1159
  • WEB問診WEB問診
TOPへ