葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック

お問い合わせ 専用ダイヤル
03-3877-1159
再診予約 専用ダイヤル
050-5357-2913

葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック

ブログ

Blog

ICS/LABA/LAMA(トリプル)吸入製剤(喘息)


ICS/LABA/LAMA(トリプル)吸入製剤とは


ICS/LABA/LAMA(トリプル)製剤は、ICS(吸入ステロイド)に加えLABA(長時間作用型β2刺激薬)とLAMA:(長時間作用型抗コリン薬)の2剤の気管支拡張薬を含む3剤成分が配合された吸入薬です。気管支喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に対し保険適応があります。この項では主に喘息診療におけるICS/LABA/LAMA(トリプル)製剤の位置づけについてまとめたいと思います。


ICS/LABA/LAMA(トリプル)吸入製剤の薬効

①吸入ステロイド(ICS):気管支の炎症を抑える
②長時間作用型β2刺激薬(LABA):気道平滑筋を弛緩させて気管支を広げる
③長時間作用型:気道平滑筋を収縮するのをブロックし気管支を広げる


ICS/LABA/LAMA ガイドラインでの位置づけ

本邦の喘息ガイドラインでは、LAMAはStep2から表記されています。現在の日常臨床ではICS/LABAを使用している方がほとんどだと思いますので、ICS/LABA/LAMAトリプル製剤は実質ICS/LABAからのStep upで使用することになります。つまりStep2→3で導入を検討します。今までは、LAMAを追加するためにはICS/LABAとは別の製剤(単剤で保険適応があるチオトロピウム)を導入する必要がありました。剤型が異なる2種類の吸入薬を併用することは煩雑であり、吸入アドヒアランスを低下させる要因となっていました。今年に入り喘息に対し保険適応が通ったトリプル製剤が2種類登場したことで、Step3に対するICS/LABA/LAMA3剤製剤への切り替えが同一の吸入デバイス内で行うことが出来るようになりました。


ICS/LABA/LAMA(トリプル)製剤

①エナジア(ブリーズヘラー)


<成分>
ICS: モメタゾンフランカルボン酸エステル
LABA: インダカテロール酢酸塩
LAMA: グリコピロニウム臭化物

カプセルを充填し1日1回吸入する製剤。カプセルは透明で薬剤が見えるため、吸った後に目視で確認が可能である。


②テリルジー(エリプタ)


<成分>
ICS: フルチカゾンフランカルボン酸エステル
LABA: ビランテロール
LAMA: ウメクリジニウム


慢性閉塞性肺疾患治療剤 「テリルジー100エリプタ」発売のお知らせ | GSK グラクソ・スミスクライン株式会社

蓋を開閉することで薬剤が充填され吸入を行う製剤。残薬数は目視で確認可能。吸入前操作が不要であり、誰でも簡単に吸入することが可能である。




<ICS/LABA/LAMA トリプル製剤のエビデンス>

エナジア(ブリーズヘラー)IRIDIUM試験

主要評価項目は投与後26週(約半年後)の1秒量の変化量、副次評価項目では喘息のコントロールをみたACQ-7スコア、喘息増悪率などをみています。

試験は5群に分かれており、高用量ステロイドを含む3剤(ICS/LABA/LAMA)、中用量ステロイドを含む3剤(ICS/LABA/LAMA)、高用量ステロイドを含む2剤(ICS/LABA)、中用量ステロイドを含む2剤(ICS/LABA)、SAL/FP高用量(アドエア)となります。

患者は中年女性が多く、喘息増悪回数は年1回~2回、ほぼ全員がICS/LABAで治療を行われており、治療前の1秒量は年齢予測値比の54.8%とかなり低いことが分かります。本邦のガイドラインで当てはめればStep2→3への切り替えを検討する方が62%、step3→4への切り替えを検討する方が37%含まれているということになります。

主要評価項目である26週時点での1秒量の変化量を表しています。ベースラインと比較し1秒量は、高用量ステロイドを含む2剤と3剤の比較では76ml、中用量ステロイドを含む2剤と3剤の比較では65mlの差が得られています。つまりLAMAを追加することで65ml~76mlの1秒量改善効果です。一方、中用量ICS/LABA→高用量ICS/LABAでは32ml、中用量ICS/LABA/LAMA→高用量ICS/LABA/LAMAでは21mlの差が得られています。このことは1秒量の改善を期待するのであればステロイド増量よりもLAMAを追加することが効果的であることを示していますが、一方でステロイドを増量することでもそれなりに1秒量が改善することには留意する必要があるでしょう。


1秒量の経時的な推移を表しています。ICS/LABA/LAMA製剤はICS/LABA製剤と比較して2日目にして1秒量の改善が大きく、立ち上がりが早いことが分かります。その後6か月にかけてさらにゆっくり改善し、1年後まで1秒量が維持できています。一方、中用量ICS/LABA/LAMAは6か月までは1秒量は改善するも、1年後にかけてやや低下しています。このことは高用量ステロイドが必要な患者が一定数含まれていることを意味していると思われます。

26週時点でのACQ-7(喘息コントロール)スコアの変化を表しています。各群においていずれもACQに有意な改善は認められませんでした。

52週(1年後)の喘息増悪率を示しています。重症増悪及び全増悪において高用量ICS/LABAにLAMAを加えることにより増悪抑制効果が得られています。

ICS/LABAにLAMAを追加することで26週時点で1秒量はステロイドの投与量によらず60~70mlの改善が得られ、52週時点で高用量ICS/LABAにLAMAを追加することで喘息増悪抑制効果が得られています。

(私見)IRIDIUM試験から考える

・ICS/LABAにLAMAを追加することで呼吸機能の改善が得られる一方、中用量ICS/LABA/LAMAでは経時的な1秒量低下がみられ、喘息の増悪率についても高用量ICS/LABA/LAMAで抑制されることは、LAMAだけでなく高用量ICSを必要とする患者が一定数いることを示しています。LAMAを追加することも良いですが、同時に呼気NO検査や末梢血好酸球数が高値、喘息増悪回数が多い場合など、高用量ICSが望ましい患者をしっかり同定して治療選択を行っていくことが重要と思われます。



②テリルジー(エリプタ)CAPTAIN試験

主要評価項目は投与24週後の1秒量変化量、副次評価項目は喘息増悪率、ACQ(喘息コントロール問診票)、SGRQ(QOL)となっています。

試験デザインですが、アドエア(ICS/LABA) 250(3週間)→レルベア(ICS/LABA) 100(2週間)→各群への割付となっています。①低用量ICS/LABA(レルベア100)、②高用量ICS/LABA(レルベア200)、③低用量ICS/LABA/LAMA(テリルジー100)、④高用量ICS/LABA/LAMA(テリルジー200)、⑤低用量ICS/LABA/LAMA (UMEC半量)、⑥高用量ICS/LABA/LAMA(UMEC半量)となっています。この臨床試験の特徴としては、前治療でアドエア250→レルベア100となっていますので、アドエア250とレルベア100の比較が可能となっていること、各群対レルベア100で見ているので、ステロイド増量効果とLAMA追加効果を確認できることです。

患者背景ですがIRIDIUM試験と同様、中年以降の女性が多くBMIは29とやや高め。気管支拡張薬吸入前の1秒量は1.73L(年齢予測値比58%)と低値でした。前治療では全ての患者でICS/LABA治療が入っています。過去1年間の喘息増悪回数は1回が48%、2回が16%であり、増悪回数はIRIDIUM試験よりやや低い印象です。特筆すべきは試験開始→ランダム化の時点ですでにBaselineの1秒量は300ml程度(1.73L→2.02L)改善しているという点です。ランダム化前のアドエア250→レルベア100への切り替えにより既に呼吸機能が改善していることが要因だと思われます。

主要評価項目である24週後の1秒量の変化を示します。低用量ICS/LABAにLAMAを追加することで1秒量は110ml増加、高用量ICS/LABAにLAMAを追加することで1秒量は92ml増加が得られています。一方ステロイドの増量効果ですが、低用量ICS/LABAと高用量ICS/LABAとの比較で1秒量は52mlの増加、低用量ICS/LABA/LAMAと高用量ICS/LABA/LAMAとの比較で1秒量は34mlの増加となっています。このことから1秒量改善においてはステロイド増量よりもLAMA追加が効果的となりますがIRIDIUM同様、ステロイド増量により1秒量は52mlも改善していることは注意が必要だと思います。

52週時点での中等度~重度の喘息増悪についてはLAMA追加により有意差を認めませんでした。


52週時点での喘息増悪率をみると、低用量ICS/LABAから高用量ICS/LABAへステロイドを増量することで喘息増悪率は有意ではないものの0.87→0.57へ低下し、高用量ICS/LABAと高用量ICS/LABA/LAMAでは増悪率はほぼ変わらない結果となっています。このことからエリプタ製剤については、①FF100→200へステロイド増量により喘息増悪率は低下すること、②FF100使用下においてのみLAMAによる増悪率は低下傾向であること、③FF200使用下においてはLAMA追加による増悪率低下は見られないことが分かります。これは私見ではありますが、エリプタ製剤はステロイドの規格は低用量/高用量の2規格であり、中用量規格がないことが上記結果へつながっていると思われます。

副次評価項目である24週時点でのACQ7(喘息コントール)を示します。こちらはIRIDIUMと異なり、LAMA追加によりScore及びResponderにおいて有意な改善が得られています。

<Post-hoc解析>

ここから先は血中好酸球値と呼気NOについて、post-hock解析の結果をご紹介します。

<CAPTAIN study Post-hoc解析まとめ>

・FEV1: EoやFeNOによらず、FF100<FF200
・FEV1: EoやFeNOによらず、ICS/LABA<Triple
(Eo値に比例してFEV1は改善するが、FeNOは比例しない)

・喘息増悪: Eoによらず、FeNO>10ではFF100<FF200

(Eo値に比例してFEV1は改善するが、FeNOは比例しない)

・喘息増悪:EoやFeNOが低いほどTripleによる増悪抑制効果高く、EoやFeNOが高値になるとICS/LABAとTripleの差はなくなる

ICS/LABAにLAMAを加えると、24週時点でのFEV1は90ml~110ml増加、24週時点でのACQ7を有意に改善。post-hoc解析の結果からはEoやFeNOの値に関わらずLAMA追加によりFEV1は改善し、EoやFeNOが低いと増悪抑制効果が高い。

(私見)CAPTAIN試験から考える

この臨床試験では主要評価項目以外にも着目するべき点がいくつかあります。1つ目はランダム化前にアドエア250→レルベア100への切り替えを行っている点です。アドエア→レルベアへの切り替え後、FEV1が160ml改善していることから、現在まで同様に扱われていた両剤ですがアドエアよりレルベアへ切り替えることで呼吸機能上のメリットが得られる可能性があることを示唆しました。2つ目はPos-hoc解析です。FeNO>10ppmであればFF100よりもFF200の方が呼吸機能(FEV1)及び喘息増悪減少に寄与することを示唆しています。従来、ガイドラインでは低用量から高用量ICSへのStep upを推奨していますが、この結果をみるとICS増量によるRiskが高い一部の患者を除き、レルベア200により治療開始を行い、必要に応じてテリルジー200へのStep upが現実的なのではないかと思いました。

カテゴリー

最近の投稿

月別アーカイブ