2024.7.7 福岡で行われました講演会AREXVY Nationnal Conference in Fukuokaに参加致しました。
以下、講演要旨と所感になります。
RSウイルスワクチン(アレックスビー)は、肺炎の原因であるRSウイルス発症を予防し、RSウイルスによる入院、基礎疾患の悪化、退院後の体調悪化を防ぐことが出来るワクチンです。RSウイルスは健康な成人が罹患しても軽い感冒程度ですみますが、基礎疾患がある高齢者が罹患すると、時にRSウイルス性の肺炎を引き起こし重症化します。従って、このワクチンをすすめるべき対象者は「高齢者」かつ「基礎疾患」があり、RSウイルス肺炎により重症化しそうな患者さんとなります。一方でネックとなるのはその接種費用であり、実勢価格はおおよそ25000~27000円程度で行われていると思われます。我々医療者はRSV感染症によるリスクと、ワクチン接種による予防効果、および金銭面を患者さんに伝えた上で、患者さんの意向にそった意思決定を支援をすることが大切です。
<講演プログラム>
・Keynote Speech 超高齢社会を迎えた我が国における感染症予防の重要性
・講演1 成人RSウイルス感染症の基礎
松瀬 厚人 先生
・講演2 慢性気道疾患からみるRSV感染症の脅威とアレックスビーへの期待
玉田 勉 先生
・講演3 アレックスビーのすすめ方~かかりつけ医の立場から~
佐藤 慎二 先生
<Keynote Speech 超高齢社会を迎えた我が国における感染症予防の重要性>
・VPD:Vactine Preventable Disease(ワクチンで防げる病気)という概念
・日本においてはRSVは重点感染症Group Bに分類されている
・GroupB:
定期的にまたは突発的に国内外で一定以上の流行を起こす既知の感染症
・本邦においてもRSウイルスによるアウトブレイク事例が散見される
・2022年時点において肺炎の死亡率は第四位である
・高齢者肺炎の課題;ACP:Advanced Care Planning
・ウイルス+細菌 重複気道感染症で死亡率が上昇する
(Liu Y E Clin Med 37;100955.2021)
・成人肺炎診療ガイドライン2024(呼吸器学会)におけるRSVの位置づけ
・健常成人では上気道症状のみで自然軽快することが多いが、高齢者や基礎疾患のある成人では重症化し、肺炎の原因ウイルスとなりうる
・米国では毎年60000~160000人の高齢者がRSVで入院し、6000~10000人が死亡していると推定されている
・米国の入院症例の検討においてはRSVはインフルやCOVIDよりも頻度が高く、人工呼吸や死亡例においてRSVが最も予後不良であった。
・本邦においての報告はないが、入院を要する成人肺炎の1.2~6.3%でRSVが関与していると言われている。
・RSVワクチン:60歳以上24966人、RSVに対する下気道疾患予防率:94.1%,有害事象:注射部位反応:60.9%
・2024GOLD ReportではCDCの推奨に順じ、60歳以上および/または慢性的な心疾患/肺疾患を有する患者に対しRSV推奨度はEvidence A
講演1 成人RSウイルス感染症の基礎
松瀬 厚人 先生
・RSVのG蛋白は細胞への付着を促進し、F蛋白は融合と侵入を担う
・2才までにほぼ100%がRSVに感染する
・RSVの自然感染による免疫応答は不完全で、長く続かないため、再感染は生涯を通じて起こる
・RSV感染症状はインフルエンザなど他の呼吸器感染症と区別しにくい
・RSVの診断法:①培養×②抗原同定×(小児では感度75-95%に対し成人では感度が低い、小児と比べウイルス量少ない)③RT-PCR◎
・RSV成人鼻/気道分泌量:35~700 PFU/ml, 新生児:10*6 PFU/ml
・RT-PCR(Film Array 呼吸器パネル2.1):21種の病原体核酸を同時に検出
・RSVウイルスの上下気道症状:4~5日の潜伏期の後、上気道症状が出現。うち30%は2~3日後に下気道に及ぶ
・RSV重症化に対する加齢の影響:①免疫低下(T細胞)②炎症(IL-6)③基礎疾患(65歳までに多くの患者が基礎疾患2つ以上)④肺機能低下
・RSVはAshtmagenicである;喘息とRSVとの関係(樹状細胞とIFN-γ)
講演2 慢性気道疾患からみるRSV感染症の脅威とアレックスビーへの期待
玉田 勉 先生
・喘息気道では気道粘膜への好酸球浸潤→TLR7発現低下→IFN-γ産生低下→ウイルス排除不全が起こる
・COPDの気道粘膜防御機構は感染に対し脆弱である
・肺炎死亡率は75歳以上から急増する
・ウイルス感染はアセチルコリンM2受容体を介した気道収縮抑制作用を減弱させる(気道収縮が悪化する)
・COPD増悪は細菌49%, ウイルス26%, 好酸球25%
・RSVは皮膚・衣服などに付着して長期生存が可能
・RSVはTh2細胞や好酸球による炎症を亢進させる
・喘息やCOPD患者におけるウイルス感染後の気道反応:気道上皮の再生には4~8週必要
・杯細胞過形成の慢性化, 気道過敏性の慢性化が起こることがある(Hit-and-Run現象)
・COPD患者におけるRSV持続感染は肺機能低下速度と関連する
・RSVワクチン:2シーズンは効果が維持される可能絵師があり
・人間の行動はどうやって決まるか:心理学者レヴィン(Lewin)による行動の法則 B=f(P,E)
・人間の行動には①人間側の要因と②環境側の要因の2つが関係している
・自分が正しいと誰もが思っている。人間(≒判断)を変えるのは困難だが、環境(≒判断材料)を変えることで正しい行動はできるかもしれない
講演3 アレックスビーのすすめ方~かかりつけ医の立場から~
佐藤 慎二 先生
・RSVワクチン接種をすすめるべき患者層とアプローチについて
【講演会参加】AREXVY Nationnal Conference in Fukuoka
2024.07.07