2023.10.20 浦安市にて「シングリックスによる帯状疱疹予防SDMの実践」と題して講演を行いました。前半パートは高崎ペインクリニック院長の宮下亮一先生より「帯状疱疹後神経痛」を改めて考えると題して講演を頂き、後半パートは「シングリックスによる帯状疱疹 Shared Decision Making(SDM)の実践」と題して私が講演を行いました。前半パートは普段より帯状疱疹後神経痛の治療を行っているペインクリニックの医師の立場からの講演内容でしたが、帯状疱疹による痛みは患者の生活の質(QOL)を著しく低下させ、フレイル(虚弱)の原因となるため、内服薬や神経ブロックなど痛みが遷延化しないように先手を打っていく宮下先生の治療方針が提示されました。また痛みの原因や性状による分類方法など、はじめて聞く内容も多岐に渡っており非常に勉強になる内容でした。このように様々な治療を行っているにも関わらず、帯状疱疹を発症するとその患者さんに対する影響が大きいことから、ワクチンによる予防の意義が改めて問われていると思います。後半パートでは私からシングリックスのワクチン予防効果と患者さんへの薦め方についての講演を行いました。
以下、講演内容のダイジェストとなりますのでご興味がある方はご覧ください。
【講演要旨】
①SDM(シェアードディシジョンメイキング)とは
・SDM(シェアードディシジョンメイキング)とは治療方針決定に関して患者さんと医療者が共に参加する共同意思決定のことをいいます。
・様々な選択肢があり、生命を脅かすことがない状況下でSDMを適応すると良いと言われています。
・患者さんと医療者は双方向性の理解のもと、患者さんの価値感を踏まえて選択肢が決定されるため、選択したことに対する後悔が少なく、エビデンス(医学的根拠)に遵守した選択をする可能性が高いとされています。
・帯状疱疹ワクチンは効果が高い反面、価格(自己負担金額)が高く、接種しない(何もしない)ことも選択肢となります。そのため双方向性の理解のもと接種する/しないを考えるSDMアプローチが有用と考えられます。
②帯状疱疹とは
・帯状疱疹は50歳でほぼ全員が既感染です。
・免疫力が低下すると誰でも発症する可能性があり生涯で1/3の人が発症します。
・体に帯状の痛みを伴う発疹が出る他、顔(目や耳)に出現することもあります。
・発症すると50代以降では約2割の方が「帯状疱疹後神経疼痛」を起こします。
③帯状疱疹ワクチンの種類と効果
・シングリックスと水痘生ワクチンがあります。
・シングリックスは3年間で97%10年間で89%と長期間高い効果が持続します。
・シングリックスは年齢を問わずに高い予防効果が得られます。
・シングリックスは2か月間隔で2回・筋肉注射を行います
・副作用は接種部位の痛みや腫れが半数以上でみられ2日程度持続します。
・発熱がみられることもありますが1日程度で落ち着くことがほとんどです。
・水痘生ワクチンは3年間で51%、7年間で効果がほぼ失われます。
・70代以降、特に80代では水痘生ワクチンによる予防効果は期待出来ません。
・水痘生ワクチンは1回・皮下注射を行います。
・副作用はシングリックスに比べると軽度です。