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【講演会演者】次世代喘息治療セミナー~チームで拓くNEXT STAGE~「重症喘息患者さんの意思決定支援を考える」

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2024.11.6に東京で行われました重症喘息に関する講演会に演者として参加致しました。
講演では「重症喘息患者患者さんの意思決定支援を考える」と題して、生物学的製剤のすすめ方や医療費に関する話をしました。重症喘息に対する生物学的製剤は、医療費自己負担の問題や治療の不確実性から、導入時の説明が難しい治療です。「何を伝えるか」×「どう伝えるか」という視点から講演を行っております。





 

 

 

 

 



以下、講演録となります。
ご興味がある方はぜひご覧ください。

この講演では、「重症喘息患者に対する意思決定支援」をテーマに、診断と治療の現状、患者の医療費負担、そしてディシジョンエイドを活用した支援の重要性について述べた。


1. 重症喘息の疫学と治療課題

重症喘息は全喘息患者の5~10%に存在すると推定され、世界中で約2億6200万人の喘息患者がいる中で特に高い医療資源の使用を必要とする。日本においても、全人口の約8%が喘息を患い、中でも重症喘息は一般的な治療では十分にコントロールできないことが多い。難治性喘息の定義は、高用量の吸入ステロイド(ICS)や複数の薬剤を併用してもコントロールが困難な状態を指す。診断の際は、併存症や薬剤の適切な使用を確認しつつ、症状が治療に反応しない場合は新たな治療戦略を検討する​こととなる。


2. 生物学的製剤の進展と課題

生物学的製剤(バイオ医薬品)の登場により、重症喘息の治療は大きく変化している。抗IL-4α抗体(例: デュピルマブ)などが増悪頻度の抑制やステロイド使用量の削減に効果を示している。QUEST試験やVENTURE試験などの国際共同試験では、生物学的製剤の使用が喘息症状の改善に有効であることが証明されている。例えば、QUEST試験では年間の喘息増悪率が有意に低下し、呼吸機能も向上したという結果が報告された​。一方で、生物学的製剤は非常に高価であるため、患者への経済的負担は大きい。治療を開始するには、患者の病状に加え、経済面も考慮した慎重な意思決定が求められる。これには、薬の作用機序や期待できる効果についての詳細な説明が不可欠であり、患者が納得するまで繰り返し支援を行う必要がある。


3. 共同意思決定(SDM: Shared Decision Making)の必要性

SDMとは、医療者と患者が協力して治療方針を決定するプロセスであり、科学的根拠に基づく治療を患者の価値観と統合するものを指す。治療のメリットとデメリットを理解し、患者が納得できる治療選択を支援することがSDMの目的である。SDMの実施は、患者満足度や治療アドヒアランスを向上させることが知られている。特に、患者の認知や感情に配慮した説明が重要とされる​。


4. ディシジョンエイドの役割

ディシジョンエイドは、患者が治療選択肢を理解し、自分に合った決定を下せるよう支援するツールである。情報を簡潔に伝え、患者が医療機関で受けた説明を後で整理できるようにする。ナッジ理論を活用することで、患者がより適切な治療選択を行いやすくする仕組みも取り入れられている。ナッジ理論は、経済的なインセンティブや行動の強制を避けつつ、患者の行動変容を促す方法である。例えば、「現在バイアス」(目先の利益や損失を過大評価しがちな傾向)を克服するために、治療の長期的な利益を分かりやすく伝えることが有効とされる。また、「現状維持バイアス」(変化を避け、現状を維持しようとする心理)についても、具体的なデータを用いて患者の認識を変える工夫が必要である​。


5. 医療費負担と支援策

生物学的製剤の高額な費用は、患者の治療選択に大きな影響を与える。そこで、医療費軽減制度を活用することが重要である。高額療養費制度や医療費控除、さらには企業の付加給付制度などを説明し、経済的な不安を軽減することが求められる。これにより、患者が治療を受け入れやすくなり、治療効果を最大限に引き出せる環境を整えることができる​。患者の治療受け入れまでには、複数回の説明が必要な場合が多く、治療開始後に患者が「早く治療を始めたかった」と感じるケースも少なくない。医療者は患者に対して費用負担の詳細と共に、治療の必要性を繰り返し伝えることが推奨される。


6. 多職種連携と実践的アプローチ

重症喘息患者の支援には、多職種による連携が不可欠である。呼吸器内科医だけでなく、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどが協力することで、患者の治療理解を深め、意思決定をサポートする。例えば、看護師による定期的なフォローアップは、患者が治療選択肢をよりよく理解する助けとなる​。患者とのコミュニケーションにおいては、社会的背景や価値観を尊重し、開かれた質問を使って患者の本音を引き出す工夫が必要である。「どう感じましたか?」などの質問を用いて、患者が納得しやすい会話を心がけることが望ましい。医療者の考えを示す際も、患者が意思決定をしやすいよう、丁寧にリスクとベネフィットを提示することが重要である。


結論
重症喘息患者に最適な治療を提供するためには、患者の意思決定を尊重しつつ、科学的根拠に基づく治療を提案するSDMの実施が不可欠である。医療者は、患者の視点に立った説明と多職種での支援を通じて、患者が治療の選択に自信を持てる環境を作り上げることが求められる。

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