予防接種について
主に成人を対象としたワクチン接種を行っています。
一部のワクチンは在庫取り寄せが必要となります。
ご希望の方はお電話(03-3877-1159)にて予約をお取りください。
※未成年(18歳未満)の患者様は、ご両親が同伴されない場合、委任状が必要になります。予め委任状をご準備の上、ご来院ください。
委任状:https://kasai-yokoyama.com/pdf/ininzyou.pdf
当院で対応している予防接種
呼吸器疾患と予防接種
喘息とワクチン
気管支喘息では呼吸器感染により悪化することが知られています。ワクチン接種により感染予防を行うことは喘息の増悪を抑制出来る点からも有用です。当院では気管支喘息で加療中の患者さんには全例で毎年のインフルエンザワクチンを推奨し、65歳以上の喘息患者さんには肺炎球菌23価ワクチンを推奨しています。またステロイド内服治療を行っている重症喘息患者さんにおいては、65歳未満であっても肺炎球菌23価ワクチンの適応と考え積極的な推奨としています。
インフルエンザワクチン
- インフルエンザは喘息患者における急性増悪に影響することが知られており、インフルエンザワクチン接種は喘息の急性増悪による緊急受診や入院を59~78%予防する可能性が示されています。(3)
- 米国では、中等症以上の喘息患者はインフルエンザ罹患による重症の合併症を来す可能性が高いハイリスク群とされ、毎年接種を受けるべきとされています。(4)
23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)
- 2~49歳の喘息患者を対象にした調査(5)によると、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)のリスクはオッズ比2.4(95%信頼区間:1.9-3.1)と高いことが報告され、また小児や高齢者の喘息患者にとって肺炎球菌肺炎は急性増悪のリスクと考えられています。
- 2013〜2018 年度の期間に10道県で実施した成人IPDサーベイランス(厚生労働科学研究「大石班」)において15〜64 歳の主要な基礎疾患としては、糖尿病、自己免疫性疾患、ステロイド投与、慢性肝疾患、固形癌(治療中)と続き、免疫抑制剤投与、脾摘後、先天性無脾/脾低形成、造血幹細胞移植後等が認められています。(6)
COPDとワクチン
COPDでは呼吸器感染により悪化することや死亡率が増加することが知られています。ワクチン接種により感染予防を行うことはCOPD増悪を抑制し、死亡率を軽減させる点から有効と考えられます。当院ではCOPD患者さんでは年齢によらずインフルエンザワクチンを毎年接種し、肺炎球菌23価ワクチンを5年毎に接種することを推奨しています。また65歳以上のCOPD患者さんでは、強力な予防効果が期待出来る、肺炎球菌13価-23価ワクチンの連続接種も選択肢の1つとして推奨しています。
インフルエンザワクチン
- COPDを対象としたランダム化比較試験のメタ解析により、インフルエンザワクチンはCOPD増悪の発症頻度を減少させることが明らかになっています。(7)
- 65歳以上の高齢者を対象とした大規模疫学調査において、インフルエンザワクチンはインフルエンザや肺炎による入院を約30%減少させ、死亡を約50%減少させたことが明らかになっています。(8)
- 本邦では65歳以上の高齢者にインフルエンザワクチンの定期接種が行われるようになって以降、65歳以上のCOPD患者のインフルエンザ流行期の死亡率が有意に減少したことが明らかになっています。(9)
肺炎球菌ワクチン
- COPD患者を対象としたランダム化比較試験のメタ解析により、肺炎球菌23価ワクチンは肺炎及びCOPD増悪を有意に減少させることが示されています。(10)
- 肺炎球菌13価ワクチンはCOPDを含む65歳以上の高齢者の肺炎球菌性市中肺炎と侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発症を4年間にわたって有意に抑制したことが示されています。(11)
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって起こります。体の片側の神経に沿って、痛みを伴う赤い発疹と水疱が集まって帯状に起こり、強い痛みを伴います。症状の多くは上半身に現れますが、顔面にも現れることがあり、後遺症(顔面神経麻痺)を残すこともあります。成人の90%以上はVZVに既感染であると言われ、ウイルスは普段は神経節の中で潜伏していますが、病気や加齢、薬物などにより細胞性免疫が低下することにより再活性化され発症します。50歳以上になると帯状疱疹の発症率が増加し、80歳までには3人に1人が発症すると言われています。また発症後も3か月以上痛みが続く帯状疱疹後神経痛(PHN)の割合が年齢とともに増加し20%程度にみられると言われています。このため当院では50歳以上の方には帯状疱疹ワクチンによる予防を推奨しています。ワクチンには2種類あり当院ではどちらも接種することが出来ますが、効果や持続期間からシングリックスによる接種を推奨しています。
帯状疱疹ワクチンの比較
引用
1.喘息予防・管理ガイドライン2021「予防接種」. p. 208-9.
2.COPD診断と治療のためのガイドライン第6版「ワクチン」. p. 99-100.
3.Vasileiou E, Sheikh A, Butler C, El Ferkh K, von Wissmann B, McMenamin J, et al. Effectiveness of Influenza Vaccines in Asthma: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Infect Dis. 2017;65(8):1388-95.
4.GINA Report [Available from: https://ginasthma.org/gina-reports/.
5.Talbot TR, Hartert TV, Mitchel E, Halasa NB, Arbogast PG, Poehling KA, et al. Asthma as a risk factor for invasive pneumococcal disease. N Engl J Med. 2005;352(20):2082-90.
6.6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方 [Available from: http://www.jsvac.jp/pdfs/Pneumococcal_vaccine_202105.pdf.
7.Kopsaftis Z, Wood-Baker R, Poole P. Influenza vaccine for chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Cochrane Database Syst Rev. 2018;6:CD002733.
8.Nichol KL, Nordin JD, Nelson DB, Mullooly JP, Hak E. Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly. N Engl J Med. 2007;357(14):1373-81.
9.Kiyohara K, Kojimahara N, Sato Y, Yamaguchi N. Changes in COPD mortality rate after amendments to the Preventive Vaccination Law in Japan. Eur J Public Health. 2013;23(1):133-9.
10.Walters JA, Tang JN, Poole P, Wood-Baker R. Pneumococcal vaccines for preventing pneumonia in chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2017;1:CD001390.
11.Bonten MJ, Huijts SM, Bolkenbaas M, Webber C, Patterson S, Gault S, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015;372(12):1114-25.