予防接種

予防接種について

主に成人を対象としたワクチン接種を行っています。
一部のワクチンは在庫取り寄せが必要となります。
ご希望の方はお電話(03-3877-1159)にて予約をお取りください。

※未成年(18歳未満)の患者様は、ご両親が同伴されない場合、委任状が必要になります。
予め委任状をご準備の上、ご来院ください。

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当院で対応している予防接種

 

自治体のワクチン情報

自治体が管轄している定期接種ついては、居住する自治体のHPをご参照ください。

江戸川区
江東区
浦安市
市川市

呼吸器疾患と予防接種

気管支喘息とワクチン

気管支喘息では呼吸器感染により悪化することが知られています。ワクチン接種により感染予防を行うことは喘息の増悪を抑制出来る点からも有用です。当院では気管支喘息で加療中の患者さんには全例に毎年のインフルエンザワクチンを推奨し、65歳以上の患者さんには肺炎球菌ワクチンや新型コロナワクチン、75歳以上の患者さんにはRSウイルスワクチンの接種を推奨しています。ステロイド内服治療や生物学的製剤を行っている重症喘息患者さんにおいては、感染症罹患のリスクが高く、喘息増悪のリスクとなるため、65歳未満であっても肺炎球菌ワクチンやコロナワクチンを推奨しています。

インフルエンザワクチン

  • インフルエンザは喘息患者における増悪に影響することが知られており、インフルエンザワクチン接種は喘息増悪による救急外来受診や入院を59~78%予防する。(3)
  • 米国では中等症以上の喘息患者はインフルエンザ感染による重症の合併症を来す可能性が高いハイリスク群とされ、毎年接種を受けるべきとされている。(4)

肺炎球菌ワクチン

  • 2~49歳の喘息患者では侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)のリスクが高く、小児や高齢者の喘息患者にとって肺炎球菌肺炎は喘息増悪のリスクとなる。(5)

<引用>

1.喘息予防・管理ガイドライン2021「予防接種」. p. 208-9.

2.COPD診断と治療のためのガイドライン第6版「ワクチン」. p. 99-100.

3.Vasileiou E, Sheikh A, Butler C, El Ferkh K, von Wissmann B, McMenamin J, et al. Effectiveness of Influenza Vaccines in Asthma: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Infect Dis. 2017;65(8):1388-95.

4.GINA Report [Available from: https://ginasthma.org/gina-reports/.

5.Talbot TR, Hartert TV, Mitchel E, Halasa NB, Arbogast PG, Poehling KA, et al. Asthma as a risk factor for invasive pneumococcal disease. N Engl J Med. 2005;352(20):2082-90.

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とワクチン

COPD(慢性閉塞性肺疾患)では呼吸器感染により悪化することや死亡率が増加することが知られています。ワクチン接種により感染予防を行うことはCOPD増悪を抑制し、死亡率を軽減させる点から有効と考えられます。当院ではCOPD患者さんでは年齢によらずインフルエンザワクチン接種を推奨しています。また65歳に満たない方や、肺炎球菌23価ワクチン(ニューモバックス)接種5年後の再接種の方は肺炎球菌20価ワクチン(プレベナー20)を、65歳の方は自治体による定期接種(肺炎球菌23価ワクチン:ニューモバックス)を接種することを推奨しています。COPDの世界標準ガイドライン(GOLD)では、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンに加え、新型コロナウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、RSワクチンなども推奨されており、当院でも患者さんの年齢に合わせて推奨しています。

インフルエンザワクチン

  • インフルエンザワクチンはCOPD増悪を減少させる。(6)
  • 本邦の65歳以上の高齢者にインフルエンザワクチンの定期接種が行われるようになって以降、65歳以上のCOPD患者のインフルエンザ流行期の死亡率が有意に減少した。(7)

肺炎球菌ワクチン

  • COPD患者に対する肺炎球菌23価ワクチンは肺炎及びCOPD増悪を有意に減少させる。(8)
  • 肺炎球菌13価ワクチンはCOPDを含む65歳以上の高齢者の肺炎球菌性市中肺炎と侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発症を4年間にわたって有意に抑制した。(9)

GOLD2024による安定期COPD患者に対するワクチンの推奨(10)

  • インフルエンザワクチンが推奨される(Evidence B)
  • WHOとCDCの勧告により、新型コロナワクチンが推奨される(Evidence B
  • CDCの勧告により肺炎球菌20価ワクチン(PCV20:プレベナー20)もしくは肺炎球菌15価(PCV15:バクニュバンス)-肺炎球菌23価(PPSV23:ニューモバックス)連続接種が推奨される(Evidence B)
  • 肺炎球菌ワクチンは肺炎罹患率および増悪を減少させる(Evidence B)
  • CDCの勧告により60歳以上の慢性呼吸器及び心疾患患者にRSワクチンが推奨される(Evidence A)
  • CDCの勧告により思春期に3種混合ワクチンを受けていない場合、百日咳予防のため接種が推奨される(Evidence B)
  • CDCの勧告により50歳以上に対し帯状疱疹ワクチンが推奨される(Evidence B)

<引用>

6.Kopsaftis Z, Wood-Baker R, Poole P. Influenza vaccine for chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Cochrane Database Syst Rev. 2018;6:CD002733.

7.Kiyohara K, Kojimahara N, Sato Y, Yamaguchi N. Changes in COPD mortality rate after amendments to the Preventive Vaccination Law in Japan. Eur J Public Health. 2013;23(1):133-9.

8.Walters JA, Tang JN, Poole P, Wood-Baker R. Pneumococcal vaccines for preventing pneumonia in chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2017;1:CD001390.

9.Bonten MJ, Huijts SM, Bolkenbaas M, Webber C, Patterson S, Gault S, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015;372(12):1114-25.
10. COPD GOLD2024 Report Vaccination p46

ワクチンで防げる病気(VPD:Vaccine Preventable Disease)

現在、国が予防接種法で定める定期接種対象の「ワクチンで防げる病気(VPD:Vaccine Preventable Disease)」には「肺炎球菌」「インフルエンザウイルス」「新型コロナウイルス」「帯状疱疹ウイルス」があります。また近年、任意予防接種「RSウイルス」を対象としたワクチンも登場してきています。これらのワクチンを接種する主な目的は「死亡率や入院の抑制」「基礎疾患の悪化予防」「生活の質の低下」であり、公衆衛生的な観点からは「健康寿命の延伸」や「医療費削減」につながるものです。各ワクチンを接種することで得られるメリット(予防効果)とデメリット(費用や副作用)を考慮して、ワクチンを接種するべきかを考えていく必要があります。一方で「年齢」や「基礎疾患」により、患者さん毎に疾患の「かかりやすさ」「重症化率」「死亡率」には差があります。当院では患者さんの年齢や基礎疾患などの状態に合わせて推奨されるワクチンをお伝えしています。

ワクチンで防げる病気(VPD)一覧

ワクチンディシジョンエイド

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹とは

帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスによって起こります。体の片側の神経に沿って、痛みを伴う赤い発疹と水疱が集まって帯状に起こり、強い痛みを伴います。症状の多くは上半身に現れますが、顔面にも現れることがあり、後遺症(顔面神経麻痺)を残すこともあります。成人の90%以上は既感染であると言われ、ウイルスは普段は神経節の中で潜伏していますが、病気や加齢、薬物などにより免疫が低下することにより再活性化され発症します。50歳以上になると帯状疱疹の発症率が増加し、80歳までには3人に1人が発症すると言われています。また発症後も3か月以上痛みが続く帯状疱疹後神経痛の割合が年齢とともに増加し20%程度にみられると言われています。このため当院では50歳以上の方には帯状疱疹ワクチンによる予防を推奨しています。ワクチンには2種類あり当院ではどちらも接種することが出来ますが、予防効果や持続期間からシングリックスによる接種を推奨しています。

2025年4月より帯状疱疹ワクチンは国が定める予防接種法により定期接種化されることとなりました。接種費用や接種方法については自治体によって異なるため、詳しくは居住する自治体のHPをご参照ください。

自治体のワクチン情報

江戸川区
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シングリックスと水痘生ワクチンの比較

シングリックスは水痘生ワクチンと比較し、帯状疱疹に対し年齢に関わらず高い予防効果と長期間に渡る持続効果が期待出来ます。副作用については水痘生ワクチンと比較し、接種部位の痛み・腫れ・発赤、発熱がみられる割合が多い傾向にあります。日本以外の多くの国では帯状疱疹予防としてシングリックスを単独で推奨しており、当院でも帯状疱疹をしっかり予防したい方はシングリックスをおすすめしています。

帯状疱疹ワクチンの比較

帯状疱疹ワクチンを接種する/しないを比較してみましょう

帯状疱疹ワクチン(シングリックス)を「接種する/しない」で比較をしてみましょう。ワクチンを接種しない場合の帯状疱疹発症率は生涯で1/3と決して少なくなく、50代以降で約2/3が発症します。発症すると強い痛みがあり、顔(目や耳)にも発症することがあるためその後の生活に支障が出る可能性があります。50代以降では帯状疱疹後神経痛(電撃痛)が20%程度起こり、3か月以上持続する方もいます。治療費は発症した場合、抗ウイルス薬や診察代を含め5000円程度、後遺症等が残り治療継続を要する場合は数万円以上かかることもあります。帯状疱疹ワクチンを接種する場合、3年で97%と高率に予防できるほか、10年以上効果が持続します。一方で、接種部位の痛みや発熱などが一定の確率でみられます。ワクチンを接種しなかったからといって必ずしも帯状疱疹を発症するわけではありませんが、発症した場合の症状や後遺症など「疾病負担が大きい」ことが国が定める予防接種法による定期接種に指定された根拠となっています。

帯状疱疹を接種する/しないで比較

肺炎球菌ワクチン

肺炎と肺炎球菌

  • 肺炎は死因別第5位であり、65歳を超えると死亡者数が増加
  • 肺炎の原因菌としては肺炎球菌が20%と最多
  • 肺炎球菌には敗血症を伴う肺炎「侵襲性肺炎球菌肺炎」と伴わない肺炎がある
  • インフルエンザ感染後は「侵襲性肺炎球菌肺炎」を起こす可能性が高くなり、特に65歳以上の死亡率は28.3%と高値だった(男性、加齢がリスクとなる)(1)

肺炎は死因別第5位を占め、65歳を超えると死亡者数が増加する

本邦における市中肺炎の病原微生物

肺炎球菌ワクチンの種類と効果

  • 日本人を対象とした肺炎球菌23価ワクチンの臨床試験ではほぼ全例にインフルエンザワクチンも接種されているため、肺炎球菌ワクチンはインフルエンザワクチンと併用することが重要と考えられている。
  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪を予防する(2)
  • 75歳以上及び歩行困難な方に対し、肺炎の入院を予防する(3)
  • 高齢者施設入所者に対し、肺炎の予防と死亡率を減少させる(4)
  • 肺炎球菌肺炎を33.5%(5),侵襲性肺炎球菌を42.2%(6)予防する。
  • 肺炎球菌ワクチンにはPPSV23(ニューモバックス)、PCV20(プレベナー20)、PCV15(バクニュバンス15)がある。
  • PCV15やPCV20は蛋白結合型ワクチンであり、有効性が長期間持続する。
  • PPSV23は有効性は5年間であり、再接種が必要となる。
  • 2022年の疫学調査ではPCV20とPPSV23の莢膜型カバー率は47%と同等だった。(7)
  • 米国や英国、カナダ、フランス、ドイツなどでは初回からPCV20を推奨している。(8)
  • 日本では65歳定期接種対象者ではPPSV23を優先、それ以降の年齢ではPPSV23を5年後に再接種するか、PCV20、PCV15-PPSV23連続接種を選択肢としている。(9)

15歳以上における侵襲性肺炎球菌感染症の疾病負荷侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の血清型分布(2014年から2023年)

肺炎球菌には様々な莢膜型があり各ワクチンによってカバー出来る範囲が異なります。敗血症を合併する侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす莢膜型をみると、PPSV23とPCV20の差である4莢膜型はあまりIPDを引き起こしていないことが分かります。

高齢者における肺炎球菌ワクチンの、各国の推奨状況

各国のワクチンの推奨状況を見ると、「PCV20(プレベナー20)」を第一選択に推奨していることが分かります。PPSV23(ニューモバックス)を接種する場合はPCV15(バクニュバンス)との連続接種を前提としているため、本邦でも定期接種を受けた方には1年以上空けてPCV15(バクニュバンス)の追加接種を検討することとなります。

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(日本感染症学会/日本呼吸器学会/日本ワクチン学会合同委員会)

学会のステートメントではPPSV23(ニューモバックス)の定期接種を優先するべきとしつつも、その後はPCV15(バクニュバンス)やPCV20(プレベナー20)、PPSV23(ニューモバックス)の追加接種をすることを推奨しています。本邦における定期接種としての肺炎球菌ワクチン(PPSV23)の接種率は約50%程度といわれており、まだ接種していない方が多くいることから定期接種を優先する流れと言えるでしょう。

肺炎球菌ワクチンを接種する/しないを比較を比較してみましょう

肺炎球菌ワクチンを接種するか/しないか、それぞれのメリット/デメリットを考えてみましょう。65歳以上の患者さんでは肺炎による死亡率が増加すること、予防接種法に定める定期接種にも定められていることもあり、積極的な接種が推奨されます。肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンとの併用により十分な効果が得られるため合わせて接種するとよいでしょう。また65歳に満たない場合でも基礎疾患(糖尿病、膠原病、循環器疾患など)があったり、ステロイドや免疫抑制剤など免疫力を低下させる薬を内服している方では、65歳まで待たずに早めに肺炎球菌ワクチンを接種するという選択肢も考えられます。そのような場合には長期間効果が持続するPCV20(プレベナー20)を検討するとよいかもしれません。ワクチンを接種した場合のデメリットとして副作用があります。PPSV23(ニューモバックス)では接種部位の痛みや腫れが5%以上、発熱は1~5%程度といわれています。またPCV20(プレベナー20)では接種部位の痛みや筋肉痛などの症状がやや多くなります。

引用
1)Tamura K, et al. Int J Infect Dis. 2024;143:1070 24.
2)Furumoto A, et al. Vaccine. 2008 Aug 5;26(33):4284-9.
3) Kawakami K, et al. 2010 Oct 8;28(43):7063-9.
4) Maruyama T, et al. BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004.
5) Suzuki M,et al. Lancet Infect Dis. 2017 Aug;17(8):803-804.
6) Shimbashi R, et al. Emerg Infect Dis. 2020 Oct;26(10):2378-2386.
7)AMED[https://ipd-informationcom]2-23/8/31 access
8)厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001173696.pdf
9)65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6報)2024年9月6日
日本呼吸器学会 感染症・結核学術部会ワクチンWG/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会
成人肺炎診療ガイドライン2024 メディカルレビュー p75-81

インフルエンザウイルスワクチン

インフルエンザウイルスは毎年冬季に流行し、日本の全人口の5-10%(600-1200万人)が感染し年間3000-10000人が死亡しているといわれています。株本人だけでなく、他者へ感染させないためにも、健康な人を含めて、生後6か月以上の全国民がインフルエンザワクチンを接種する必要があると考えられます。4,5

インフルエンザワクチンの効果

  • インフルエンザワクチン接種によりインフルエンザ発病を54%減少(米国データ)
  • 本邦の老人施設・病院入院中の高齢者に対する接種により発病阻止効果と約80%の死亡を阻止する効果2
  • 本邦の報告ではインフルエンザワクチンによる発症予防効果は30~70%3
  • 高齢者における肺炎予防効果やインフルエンザ関連の入院を減少させる効果3
  • 肺炎球菌ワクチンと合わせて接種することで、インフルエンザ感染後の「侵襲性肺炎球菌」を予防する

インフルエンザウイルスワクチンを接種する/しないを比較してみましょう

インフルエンザウイルスワクチンを接種することのメリットは、インフルエンザウイルス感染の発症予防とその後に発症する可能性がある「侵襲性肺炎球菌感染症」の予防です。特に65歳以上の患者さんでは肺炎予防や入院予防、施設や病院入院中の高齢者では死亡率の低減などを主な目的として予防接種法に基づく定期接種の対象疾患となっていますので、「肺炎球菌ワクチン」とともに積極的に接種を検討しましょう。また65歳に満たない患者さんでも、COPDを含む呼吸器疾患や循環器疾患、膠原病、免疫抑制状態にある方では接種をすることによりインフルエンザ感染を予防し、基礎疾患の増悪や、続発する「侵襲性肺炎球菌感染症」のリスクを低減できるため、当院では推奨しています。接種することのデメリットとして副作用がありますが、接種部位の痛み、腫れ、発赤が10-20%程度、発熱は5-10%程度と頻度はそこまで高くありません。

引用
1.McLean HQ MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2023;72:201-5
2.神谷齊 インフルエンザワクチンの効果に関する研究 厚生科学研究費補助金、総合研究報告書(平成9-11年度)
3.日内会誌 113:2064-2069.2024
4.Grohskopf LA, MMWR Recomm Rep 2023:72:1-25
5.成人肺炎診療ガイドライン2024 p78

新型コロナウイルスワクチン

  • 新型コロナワクチンは2024.4.1より定期接種B類疾患に位置づけられている。
  • 2024年度の定期接種の自己負担額は標準的には7000円で、市町村等からの助成によって異なる。
  • 世界では2020年12月からの1年間にCOVID-19による死亡を1440万人防いだと推計されている。1
  • 日本でも新型コロナワクチンが導入されていなかったら、2021年2月から11月の期間の感染者数は報告数の13.5倍、死者数は36.4倍であったと推定されている。2
  • オミクロン株流行期の2022年1月から5月の東京都でも、直接的・間接的に感染者数を65%減少させた。3
  • 我が国で実施された血清疫学調査では2024年3月時点で、感染既往を示す抗体保有率は全年齢で60.7%であったが、60代で51.9%、70代で32.8%であった。未だ高齢者を中心に自然感染による免疫を獲得していない人が多いことを示しており、引き続きワクチンによる免疫の獲得が予防に重要であることを示している。4
  • 2023年秋開始接種としてXBB.1.5対応ワクチンの特例臨時接種が実施されたが、接種率は全体で22.7%、高齢者でも53.7%にとどまり、高齢者の免疫が十分ではないことが考えられる。5
  • 20235月から20244月の1年間のCOVID-19による死亡者数は32576人であった。6
  • 2023年5月の5類以降までの3年4カ月間のCOVID-19の死者数は74096人であった。7
  • 2017, 2018年2シーズンの60歳以上のインフルエンザの平均年間死者数は10908人であった。8
  • オミクロン株流行期の海外データでは65歳以上のCOVID-19入院患者の30日以内致命率はインフルエンザよりも1.78倍高い。9
  • COVID-19の罹患後症状(Long COVID)は高齢者でも見られ、本邦の日常生活に支障をきたす程度の症状が3カ月以上持続する人の割合が70歳以上で15.7%であった。10
  • COVID-19罹患後は1年間にわたって心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが1.6~3.6倍増加し11認知機能低下や認知症の発症にも関連していること12が報告されている。
  • 新型コロナワクチンには発症予防効果や重症化予防効果だけでなく、COVID-19の罹患後症状を予防する効果もある。2021~2022年の新型コロナワクチンと罹患後症状の関連に関する世界の5つの研究をまとめた分析では、新型コロナワクチンを2回以上接種した人では罹患後症状の頻度が43%減少していたことが報告されている。13新型コロナワクチンは65歳以上の人において、COVID-19関連の血栓塞栓症(虚血性脳卒中、心筋梗塞、深部静脈血栓症)の予防に47%の有効性を示した。14
  • 免疫系の機能が加齢とともに低下すると、新規抗原に対する免疫応答が不完全になり、感染またはワクチン接種後に強力な免疫を獲得する能力が低下する。15

  • ナイーブT細胞のプールは加齢とともに減少し、SARS-CoV-2に反応して中和抗体応答および細胞傷害性T細胞を生成する能力に影響を及ぼす。16

  • 新型コロナワクチンの変異株に対する有効性と長期予防効果(ACIP)をみた報告では、コロナワクチンが変異(XBB→JN1)するか、前回からのワクチン接種間隔が120日以上空くと発症、入院、重篤疾患に対する予防効果が大幅に減少することが分かった。17

<引用>

  1. Watson OJ, et al. Lancet Infect Dis 22(9):1293-1302, 2022
  2. Kayano T, et al. Sci Rep 13(1):17762, 2023
  3. Kayano T, et al.BMC Infect Dis 23(1):748, 2023
  4. https://www.mhlw.go.jp/content/001251915.pdf. Accessed Aug 8, 2024.
  5. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/syukeihou_00002.html. Accessed Aug 31, 2024.
  6. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html. Accessed Aug 31, 2024.
  7. https://covid19.mhlw.go.jp/. Accessed Aug 31, 2024.
  8. Noda T,et Ann Clin Epidemiol 4(4):129-132, 2022
  9. Xie Y, et al. JAMA 329(19):1697-1699, 2023
  10. Sugiyama A, et al. Sci Rep 14(1):3884, 2024

  11. DeVries A, et al. JAMA Health Forum 4(3):e230010, 2023

  12. Shrestha A, et al. Ageing Res Rev 101:102448, 2024

  13. Tsampasian V, et al. JAMA Intern Med 183(6):566-580, 2023

  14. Payne AB, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2024;73:16–23

  15. de Candia PTrends Immunol 2021;42:18–30.

  16. Rey GU. Mountain View, CA: Creative Commons; 2020.

  17. MMWR, September 10, 2024. Vol 73 (37);819-824
    参考:2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解(日本感染症学会/日本呼吸器学会/日本ワクチン学会)

新型コロナワクチンに対する当院の考え方

  • 予防接種法に基づく定期接種B類疾患に指定されており、65歳以上の方については「肺炎球菌」「インフルエンザ」と同様に毎年の接種を推奨しています。
  • 65歳未満の方は自費となり高額(16500円)となりますので、特に重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を持つ患者さんについては情報提供を行っています。

新型コロナ感染症重症化のリスク

50-64歳:下記のうち複数を保有するとコロナ重症化のリスクと考えられる

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 高血圧症
  • 慢性腎臓病
  • 悪性腫瘍
  • 肥満
  • 喫煙
  • 免疫抑制

新型コロナワクチンの副作用

  • COVID-19ワクチンは3年間の安全性監視によって良好な安全性プロファイルが実証されている1
  • COVID-19ワクチン接種後にアナフィラキシー反応が報告されることはまれである2
  • 心筋炎および心膜炎のまれなリスクが存在し、主に12~39歳の男性に発生する3
  • 更新されたCOVID-19ワクチンについて新たな安全性の懸念は確認されていない4
  • 65歳以上ではワクチン接種後の副作用は、青年および若年成人よりも頻度が低く重症度も低い5
  • 国内における3回目接種後の心筋炎・心膜炎疑いの全体の報告頻度は、若年男性で高かったものの、2回目よりも低い傾向となっており、また4回目の接種では接種後の心筋炎・心膜炎疑いの全体の報告頻度も極めて稀であり、重大な懸念はないとされた6
  • 新型コロナウイルス感染後とmRNAワクチン接種後の心疾患発症の比較については、米国CDCからも若年層を含む全ての年齢層の男女において、新型コロナウイルス感染後の方がmRNAワクチン接種後よりも心合併症のリスクが有意に高いと報告されており、厚生労働省の審議会においても、この報告を踏まえ、引き続き全ての年齢層において新型コロナワクチンの接種体制に影響を与える程の重大な懸念は認められないとされている6

<引用>

1.CDC. Vaccine safety: coronavirus disease 2019 (COVID-19) vaccines. Atlanta, GA: US Department of Health and Human Services, CDC; 2023.
2.Klein NP, et al. JAMA  2021;326:1390–9.
3.Markowitz LE, et al. Vaccine 2024. Epub February9,2024
4.Wallace M. Evidence to recommendations framework. Presented at the Advisory Committee on Immunization Practices meeting, Atlanta, Georgia, February 28, 2024
5.Food and Drug Administration. COVID-19 vaccines. Silver Spring, MD: US Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration; 2024. Accessed April 2, 2024.
6.厚生労働省新型HPコロナワクチンQ&A https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_qa.html#2

新型コロナウイルスワクチンを接種する/しないを比較してみましょう

ここでは主に一般的に接種されている「コミナティ(ファイザー)」について取り上げます。コロナワクチンを接種することのメリットは①発症予防効果②入院予防効果③死亡予防効果④コロナ後遺症予防効果⑤コロナ関連血栓塞栓症予防効果、デメリットとしては主に副作用があり、①接種部位の痛み(85.6%)②腫れ(10.3%)③発熱(16.8%)④頭痛(59.4%)⑤筋肉痛(39.1%)⑥関節痛(25.3%)⑦疲労(66.0%)⑧下痢(14.8%)などがみられ、おおむね1~2日程度持続します。65歳以上の方及び50-64歳で重症化リスクとなる基礎疾患を複数持っている方については、特に接種することで得られるメリットが大きいと考えられます。

RSウイルスワクチン(アレックスビー)

RSウイルス(RSV)とは

  • RSウイルス(RSV)は飛沫感染によって広がるウイルスで、特に基礎疾患を抱える高齢者にとって重要な病原体と考えられている。

  • RSVは高齢者(60歳または65歳以上)の外来呼吸器感染症(RTI)の6~11%で特定され、RTIで入院する成人(18歳以上)の4~11%を占め、入院患者の6~15%が集中治療室に入院し、RSV呼吸器感染症で入院した成人全体の1~12%が死亡している。

  • 高所得国の60歳以上の成人におけるRSV感染症の年間発生率は約3~7%と推定されている。

  • RSVは成人においてインフルエンザと同様の疾病負担を占めているが、重度のRSウイルス感染症で入院する患者はより高齢(ほとんどが60歳以上)で、合併症や呼吸器症状が多く、発熱がない場合が多い。

  • RSV罹患後も長期間続く後遺症が見られ、基礎疾患(通常は心不全やCOPD)の悪化も含まれる。

  • RSVに対する特異的な治療法はほとんどなく、支持療法が主体となる。

引用:Wildenbeest JG, Lancet Respir Med. 2024 Oct;12(10):822-836

本邦におけるRSVの疫学

  • 本邦における入院を要する成人肺炎の1.2-6.3%でRSVが検出された1,2,3
  • 日本のRSVの疫学情報の大部分は小児が占めており、成人の疫学研究は限られている4
  • 2019年から2020年にかけて国内10施設で行われた前向き観察研究で、65歳以上の1000人に急性呼吸器感染症を疑う際に、気道検体からの遺伝子検査が行われた。24人からRSVが検出され1人が入院治療を必要とし、11からインフルエンザが検出され1人が入院治療を必要とした5
  • 2018年から2019年にかけて国内施設で行われた前向き観察研究で、急性呼吸器感染症で入院を必要とした173に対し気道検体からの遺伝子検査が行われ、7人(4.0%)がインフルエンザウイルス、9人(5.2%)がRSウイルス、11人(6.4%)がヒトメタニューモウイルス(hMPV)であった。RSVの患者2人とhMPVの患者1人がICU入院を必要としたが、インフルエンザでは必要としなかった。RSVhMPVの患者は、インフルエンザ患者と比較して、退院123か月の時点で抗生物質、気管支拡張薬、吸入コルチコステロイドの使用が多かった6

<引用>
1.Maruyama T, Respir Med. 2008 Sep;102(9):1287-95.
2.Maruyama T, Clin Infect Dis. 2013 Nov;57(10):1373-83
3.Maruyama T, Clin Infect Dis. 2019 Mar 19;68(7):1080-1088.
4.倉井大輔,日内会誌.2024.113:2077-2083
5. Kurai D, Influenza Other Respir Viruses. 2022 Mar;16(2):298-307.
6. Shinkai M, Respir Investig. 2024 Jul;62(4):717-725.

市中肺炎におけるウイルス感染の関与

  • 市中肺炎におけるウイルスの検出頻度(SARS-CoV-2流行前)を調査したシステマティックレビューでは研究間でウイルスの検出頻度に差はあるものの24.5%と報告されている。1
  • 18歳以上の市中肺炎の検出微生物を調査した研究では、23%でウイルスのみ、3%で細菌とウイルスが検出された。2
  • 65歳以上ではインフルエンザウイルスや肺炎球菌の検出率が若年成人の約5倍、ライノウイルスは10倍であった。80歳以上では、RSV, パラインフルエンザウイルス, コロナウイルスの検出率は肺炎球菌と同等であった。2
  • Multiplex PCRを用いて市中肺炎の検出微生物を検討した調査では、30%にウイルスが検出されたが、そのうち82%で細菌も同時に検出された。3
  • 本邦における多施設共同の市中肺炎サーベイランスではウイルスの中ではインフルエンザウイルスが最も頻度が高く、細菌との複数菌感染が38%に認められた。この研究は12月-3月とインフルエンザ流行期に行われたものである。4
  • ウイルス性肺炎はその発症機序からウイルス感染そのものによる肺炎(純ウイルス性肺炎)と細菌性肺炎(混合感染型肺炎と二次性細菌性肺炎)があるとされる。インフルエンザウイルスについては細菌感染を主なる肺炎発症機序としており5,6、純ウイルス性肺炎の頻度が低い4,7一方でCOVID-19肺炎では細菌との混合感染は少なく純ウイルス性肺炎が主体である。8,9,10

<引用>
1.Burk M, Eur Respir Rev. 2016 Jun;25(140):178-88.
2.Jain S, N Engl J Med. 2015 Jul 30;373(5):415-27.
3.Gadsby NJ, Clin Infect Dis. 2016 Apr 1;62(7):817-823
4.Saito A, J Infect Chemother. 2006 Apr;12(2):63-9
5.Seki M, Eur Respir J. 2004 Jul;24(1):143-9.
6.Mauad T, Am J Respir Crit Care Med. 2010 Jan 1;181(1):72-9.
7.Ishida T,J Infect Chemother. 2021 Mar;27(3):480-485. 
8.Rawson TM,Clin Infect Dis. 2020 Dec 3;71(9):2459-2468.
9.Lansbury L, J Infect. 2020 Aug;81(2):266-275.
10.Langford BJ, Clin Microbiol Infect. 2020 Dec;26(12):1622-1629.
参考) 成人肺炎診療ガイドライン2024 メディカルレビュー社

ACIP(米国予防接種実施諮問委員会)によるRSVワクチンの推奨

  • 75歳以上と重症RSV感染症のリスクが高い60-74歳に推奨されている

60歳以上にRSVワクチンを100万回分接種した場合、「75歳以上」「60-74歳で基礎疾患が1つ以上ある患者」において、「RSVによる入院」「ICU入室」「死亡」を多数抑制できると推定されている。一方、「60-74歳で基礎疾患がない患者」においては、そこまでリスクとならないことが指摘されている。

肺炎症例において、RSウイルスはインフルエンザと比較して入院期間が長くなる

  • RSV感染症(平均30.0日)はインフルエンザ(平均15.2日)と比較して入院期間が長くなることが報告されている。 髙橋 洋 他:感染症学雑誌 2016;90(5),645-651

RSVワクチンを接種する/しないを比較してみましょう

RSVワクチンを接種すべき対象は「75歳以上」「60-74歳+基礎疾患がある方」であり、それ以外の患者さんではRSVによる重症化リスクはそこまで高くないと考えられます。RSVワクチンは現在、予防接種法に定められる定期接種の対象ではなく、接種する場合は自費接種となるため高額となります。接種の対象となる方は、まずは費用対効果が高い定期接種ワクチン(「肺炎球菌」「インフルエンザ」「コロナ」)を優先的に接種しましょう。接種することで3シーズンに渡りRSVによる気道感染を抑制できます。副作用は接種部位の痛み(60.9%)、発赤(7.5%)、頭痛(27.2%)、筋肉痛(28.9%)、関節痛(18.1%)、発熱(2.0%)となっています。RSVは治療薬がなく、重症化して入院となった場合長期化するといわれています。長期入院や持病の悪化により、退院後に不自由な生活を余儀なくされること、少なくともインフルエンザよりは致死率が高いことには注意を払うべきと考えられます。

 

 

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